今まで歯周病というと歯の周りにいる細菌が、歯肉に炎症を起こし、骨を溶かし、歯が抜けるだけの病気と考えられてきました。しかし最近の研究で歯周病という病気の影響は口腔内だけに留まらず、長くゆっくりとした炎症(慢性微小炎症)の進行に合わせ少しずつ口腔内細菌を全身の臓器に運ぶ病気であることが分かってきています。
歯と歯茎(歯肉)の境目には歯に沿って歯周ポケットがあります。そこは口腔内細菌の棲んでいる場所で、腸内細菌が腸のヒダに腸内フローラ(バイオビオーム)を形成しているのと同じことになります。歯周ポケットの中は空気があまりないので悪玉菌である嫌気性菌が多く生息しています。歯磨きが悪くて嫌気性菌が増えてくるとポケット内面に免疫細胞が血管からたくさん出て、戦いがおこります(炎症)。
それゆえ血管は免疫細胞が出やすいように拡張してくるので、歯茎は外からみると赤く腫れて見えます。触るとすぐに血が出ます。その状態になると歯周ポケットの内面には潰瘍が形成されています。
この潰瘍の表面から免疫細胞の攻撃を逃れた口腔内細菌が拡張した血管の中に侵入します。当然、血管内に侵入した口腔内細菌は、心臓の鼓動(1分間に50〜70回)に合わせ全身に伝播されます。
全身を回った口腔内細菌は一部が全身の臓器に止まりそこで炎症を起こすなどの悪さをします。このことが継続していくと口腔内細菌が命を落とすような重篤な病気につながっていきます。
歯周病は口の中の病気として歯を抜くことになるのみならず、全身にも影響を及ぼし、隠れた病気を作っていきます。感染予防(インフェクションコントロール)を十分に行い歯周ポケットの中に潰瘍を作らないことが本当の健康を獲得していくのに必要になります!
基本的に治療は、歯周ポケット内の細菌群(バイオフィルム)を除去・破壊を目的に行い、結果的に歯周ポケット内の炎症を抑える施術になります。
レーザー治療はレーザーの先端をポケット内に入れてレーザーを照射し細菌の塊であるバイオフィルムを破壊する治療です。対象の範囲により治療時間も変わってきますが、15〜30分の治療になります。麻酔に関しては、ケースによりかける場合とかけない場合があります。
次亜塩素酸水を超音波洗浄機のノズルの先端から流してポケット内をよく洗浄(イリゲーション)する方法です。ポケット内の常在菌バイオフィルを破壊するために行います。部分的もしくは全体的に施術し、15~60分の治療時間です。必要に応じて麻酔を使用します。施術は1~3ヶ月ごとに行います。
口腔内の細菌を一度完全に除去することで歯周病の治癒を促進させる方法です。抗菌剤の前投与、全顎麻酔後のSRP、歯周ポケット内の無菌化が3つの柱になります。また、処置後にロイテリ菌の補給を行い善玉菌の定着を目指します。
治療は1回で、1〜1.5時間かかり、全ての歯に麻酔をかけて行います。