今回のブログでは、2022年秋季日本歯周病学会学術大会のランチョンセミナー、理化学研究所生命医科学研究センター粘膜システム研究チームの山崎和久先生の“Fusobacterium nucleatum(以降Fn)と口腔・全身の健康“についてお話ししたいと思います。山崎先生は長く新潟大学で教授として研究をされていましたが、2020年理研に客員主管研究員として研究チームに参加されています。
Fnは、歯周病原因菌と言われるレッドコンプレックス(Pg、Tf、Td)に比べ、歯周病の発症・進行における役割の注目度は低くなっていますが、歯周ポケット内のプラーク形成に重要な働きをしています。また、治療による機械的除去や化学的除去(抗菌療法)に対してPgと比較しても抵抗性が強いようです。近年、大腸がん患者の腸内から検出されており、大腸がんにおけるFnの役割の解析が進んできています。
またレッドコンプレックスの中ではTf(タンネレラ・フォーサイシア)が検出される場合、Fnも検出されることが多く2つの菌の間に相関があると考えられています。細菌もそれぞれ助け合って生き抜いていこうと助け合っているようです。
以上のことからもレッドコンプレックス3菌種に続いて注意の必要な細菌になるので、細菌ゲノム検査でFnの有無を調べておきたいところです。
山崎先生は、以前より口腔内細菌と全身疾患の関係についての研究をされ、論文を発表されています。理研でのさらなる活躍に期待しています。